
美容師という仕事は、ただ髪を切ることではなく、お客様が内面に抱えているヘアスタイルや髪質への好みやコンプレックスを対話の中から読み解いて初めて技術に落とし込めるものです。お客様とのコミュニケーションには強いこだわりを持っています。そんな美容師の仕事を20年続けてきて、コミュニケーションで大切にしていることを、今回3つのポイントに分けて説明していきます。
- 距離感
- 伝える言葉
- フラットな姿勢
1. 『距離感』
まずは、相手と自分の空気を感じること、初対面の人と昔からの馴染みの友達といる時では、二人の間に流れる空気が違いますよね。明らかに、相手の様子を伺うような状態と、突然くしゃみをしても笑いあえる状態とでは天と地ほどの差があります。
相手がもし、まだ距離を感じるような相手であれば、その距離を感じつつ、相手の警戒を紐解いて行くことが、大切になります。それは、相手の性格や人柄に、大きく影響を受けます。
目の前の人がどんな人なのか、踏み込んでいいのか、じわじわといった方がいいのか、
基本的には踏み込まないと、距離感は縮まりません。踏み込んだコミュニケーションはリスクではありますが、相手との関係性を深めるためには、リスクを承知で踏み込んでいくことが大切です。
相手が違和感を感じないように自然と踏み込んでいくにはどうしたらいいか、
相手のことを考えることが必要です。

2. 『伝える言葉』
同じ意味を伝えたとしても、使われている言葉によって相手の受け取り方は大きく変化します。逆に自分に置き換えてみても、相手の言葉づかいによって、嬉しいとか悲しいとかムカつくとか感情が刺激されることがあるのではないでしょうか。
つまり、使う言葉の選択によって伝えたいことは、同じでも伝わり方が変わるということです。相手への伝わり方が変化することを知っていないと
「相手がどんな反応をするのか、想像できないから伝えるのが怖い」
そう思ってしまい、言いたいことも言えなかったりすることもあるのではないでしょうか。
相手がどんな受け取り方をするかは、自分ではコントロールできないことなので、
過剰な心配は、考えてもあまり意味がありませんが。
しかし、相手を気遣い、受け取る側のことを想像して言葉を選択することが人にはできます。
「言いたい事を相手に受け取りやすいように言う」
自分が言いたいことが言えないと、自分が疲れちゃって、「話すのが嫌だ!」ってなってしまうのは勿体無いです。自分の思った事を、相手に聴いてもらいやすいように言う。
(それでも、これは言ってはダメと言う事はもちろんあります)

3. 『フラットな姿勢』
コミュニケーションを取るということは、人と人が、自分の価値観を見せ合うような物です。
前提として、「みんな違う価値観をそれぞれに持っている」と思っておくことです。
話しが噛み合わない事があるのは、当たり前だし、自分の価値観と似ていれば嬉しい。
つまり、相手に対して偏った価値観を押し付けないことです。
そのほうが、違う価値観であったときに「なにそれ?!」って興味を持つこともできます。
ただ、そうは言っても価値観というものは、その人の中にあるもの物事への感じ方や受け取り方は無意識に、その人の価値観が影響します。
できる限り「フラットな姿勢」で受け取る意識をすることです。
逆にこちらの言葉には、自分の価値観が嫌でも乗ります。相手がどんな価値観であったとしても、それはその人のものです。たとえ自分とは違ったとしても
「それも面白いですね!自分が大切にしているのは、こうです」
って明るくはっきりと言ってしまいましょう。
自分の価値観を大切にして、相手の価値観も尊重することができれば互いに気持ちの良いコミュニケーションを取ることができます。
自分の価値観を曲げる必要もないし、相手の価値観も否定しなくてもいい。
相手の価値観を尊重ばかりしていては、自分の価値観が分からなくなっていきそう。なんて心配になりそうですが、自分を見失うのが怖いという人には。まずは自分のブレない価値観を作っていく事が大切です。
それは、人の成長の一つだと思っています。自分自身のしなやかな強い価値観を作るために
いろんな価値観に触れ、自分の価値観を作り上げていく。その過程にある、今の自分の価値観に自信を持つ。
もしかしたら、
大きな体験によって自分の価値観の軸がブレることもあるかもしれない。
それでいいと思います。その時はしんどいけど、その後にできた自分の価値観の軸は、今よりも芯の強いものになります。いろんな価値観と出会い、今よりもっと深みのある自分らしい価値観を作るために、
毎日育てていきたいですね。
